50年目の孤独と共生――美瑛「セブンスターの木」が問いかける、観光と大地を守る新たな景色【2026年現地ルポ】

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50年目の孤独と共生――美瑛「セブンスターの木」が問いかける、観光と大地を守る新たな景色【2026年現地ルポ】
50年目の孤独と共生――美瑛「セブンスターの木」が問いかける、観光と大地を守る新たな景色【2026年現地ルポ】
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🎵 50年目の孤独と共生――美瑛「セブンスターの木」が問いかける、観光と大地を守る新たな景色【2026年現地ルポ】

セブン スター の 木が美瑛のなだらかな丘の上にその孤高の枝を広げてから、すでに半世紀近くが経つ。北の大地に吹きつける雪混じりの風を一身に受け、カシワの大木は2026年の今も、見渡す限りのパッチワークの丘を見守り続けている。1976年、たばこのパッケージに採用されたことで一躍全国の知るところとなったこの1本の木は、いま単なるノスタルジックな撮影スポットの枠組みを脱ぎ捨て、日本が直面する観光過熱と景観保護の最前線に立っていた。

冬の早朝、零下15度の静寂を切り裂くように乾いたシャッター音が響く。澄み切った朝の光の中で白く輝く霧氷をまとうセブン スター の 木の凛とした佇まいを一度でも目に焼き付けたなら、なぜこれほど多くの旅人が季節を問わずこの丘を目指すのか、言葉など交わさずとも腑に落ちるはずだ。だが、その息をのむ美しさの足元で、地元農家と自治体が長年にわたり繰り広げてきた葛藤と模索の物語を知る者は、まだ驚くほど少ない。

昭和の偶然が生んだ奇跡:1976年のパッケージ採用から50年の歩み

時計の針を半世紀前へと巻き戻してみる。1976年、日本専売公社(現JT)が発売した「セブンスター」の観光記念パッケージ。白黒の印画紙に焼き付けられたのは、遮るもののない丘の上にポツンと佇む、一本の素朴な木だった。

それまで名前すら持たなかったカシワの木は、一夜にして全国区のスターへと変貌を遂げた。当時は展望デッキもなければ、舗装された駐車場もない。北海道の過酷な風雪から作物を守るために開拓農民が残した「ただの防風林」が、メディアのレンズを通じて日本人の旅情を激しく揺さぶった。以来、昭和から平成、令和へ。時代ごとのスクリーンを通じて、この木は何百万人もの記憶に原風景として刻まれ続けてきた。

足元で揺れる大地――「踏み込み」問題と農家が流した涙の軌跡

美しさは時に、静かな暴力へと転じる。美瑛の丘が抱え続けてきた問題の根幹には、「ここは観光地ではなく、命を育む農地である」という厳然たる事実があった。

農道を行き交う大型観光バスの排気ガス。最高の角度を求めて畑へと踏み入る無数の足跡。靴底に潜む目に見えない病原菌や害虫は、ジャガイモや小麦を一網打尽にする致命的な脅威だ。「綺麗な風景を撮りたかっただけ」という無垢な好奇心が、誰かの生活の糧を土足で踏み荒らす。過去にはマナー違反の末に切り倒された有名なポプラの木もあった。この木もまた、観光と農業の深い断絶の狭間で、幾度となく危機に晒されてきた歴史を持つ。

2026年のスマート景観保護:AIセンサーとデジタルマナーが変えた現場

2026年の現地を訪れると、張り詰めていた空気の質が変わっていることに気づく。メガホンを持った監視員が声を荒らげる光景は、もうどこにもない。

農道の境界には景観を邪魔しない超小型のスマートセンサーが並び、禁止エリアへの侵入を感知すると、多言語対応のスマートフォンアプリへ即座に柔らかな注意喚起が届く。周辺道路の無断駐車を抑止するIoTパーキング管制も功を奏した。締め出すのではなく、テクノロジーを介して農地と観覧エリアの境界線を可視化する。「撮らせない」から「互いの尊厳を守りながら分かち合う」へ。美瑛の町が重ねた泥臭い実験は、着実な実を結び始めている。

四季が織りなす圧倒的な陰影:あえて厳冬期に訪れる写真家たちの証言

金色の小麦が波打つ盛夏や、カラマツが黄金に染まる秋もいい。だが、このカシワの真価が浮き彫りになるのは、すべてが雪に埋もれる厳冬期だ。

カシワの木には独特の生態がある。冬になっても枯れ葉を落とさず、春に新しい芽が出るまで枝に茶褐色の葉を抱き続けるのだ。雪原の中に浮かび上がる茶褐色の葉と荒削りな幹の黒は、極寒の美瑛で圧倒的な存在感を放つ。冷え込みが極限に達した朝、周囲の空気ごと凍りついたようなダイヤモンドダストが舞う瞬間、観光客の息が止まる。自然の厳しさと、そこに居座り続ける命の強靭さ。単なる絵葉書ではない「生の質感」がそこにある。

樹齢を重ねるカシワの叫び――気候変動と老木保存のリアル

だが、永遠に見える巨木も生物としての寿命からは逃れられない。現在の推定樹齢は約90年から100年とされている。

近年激化する突風や記録的な豪雪。幹の一部には腐朽が見られ、強風によって太い枝が折れるリスクが年々高まっている。町と樹木医による定期的な診断、強風を受け流すためのワイヤー補強、土壌のエアレーション作業など、老木の命をつなぐための手当ては今も水面下で続く。「今の形のまま見られるのは、あとどれくらいなのか」。現地で保護に携わる人々の眼差しは、静かだが切迫している。

消費される風景から「育む風景」へ:美瑛が指し示す次世代の観光道

写真を撮ってSNSに投稿し、そのまま通り過ぎる。そんな消費型の観光は急速に色あせつつある。

現在美瑛では、景観を保全するためのクラウド型ファンディングや、地元食材を味わいながら農作業の背景を学ぶ体験プログラムが旅人の共感を呼んでいる。この木が作り出す絶景の正体は、100年以上にわたり大地を耕し続けてきた農民たちの汗の軌跡そのものだ。風景の裏側にある暮らしへのリスペクトを持って初めて、旅人は本当の美しさに触れることができる。

夕刻、十勝岳連峰の稜線が茜色から深い藍へと沈んでいく。西日を浴びて影を長く伸ばす大木を見上げていると、風景を守るとは、ただそこに木を残すことではなく、木を愛する人々の意志を紡ぐことなのだと教えられる。 (出典: セブン スター の 木(Yahoo!ニュース)

セブン スター の 木
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