「ギラギラ」から「知的発光」へ——2026年、なぜ街は再び光の粒子に熱狂しているのか
ラメ 入りアイテムを「若者のフェス用」や「夜のパーティー専用」と決めつけていた時代は、音を立てて崩れ去った。2026年春、東京・表参道から丸の内のオフィス街に目を向けると、上質なリネンジャケットの織り目や、ミニマルを極めたヌードネイルの指先に、かすかに息づく微細な光の粒子が視線を奪う。かつてのバブル景気を想起させるような、暴力的な眩しさではない。日差しやオフィスの間接照明を浴びて、ふとした瞬間にだけ表情を変える抑制された輝き。それがいま、性別も年代も超えて人々の日常に静かに、だが確実に浸透している。
伊勢丹新宿店をはじめとする主要百貨店のビューティーフロアでは、肌本来の凹凸や血色を覆い隠すのではなく、光の乱反射で補正するラメ 入りコスメの売上が前年比で40%を超える伸びを記録しているという。「クワイエット・ラグジュアリー」と呼ばれる無彩色で極端にストイックなトレンドが数年間続いたあと、消費者が求めたのは冷淡なミニマリズムからの解放だった。環境配慮型の新素材開発が急速に進んだことも追い風となり、いまや輝きは「主張」ではなく「知性と抜け感」を表現するツールへと進化を遂げた。この現象の裏で何が起きているのか、現場を歩いた。
マイクロプラスチック規制が引き起こした「バイオラメ」の技術革新
このブームを技術面から牽引しているのは、皮肉にもかつてラメの天敵と目された環境規制だった。EUが段階的に強化してきた未分解性マイクロプラスチックの禁止令は、世界中の原材料メーカーに劇的な構造転換を迫った。かつてのラメといえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)を細かく裁断したフィルムが主流であり、環境負荷の象徴として名指しされた苦い経緯がある。
だが、研究者たちは立ち止まらなかった。2026年現在、店頭を飾るプレミアム製品の多くは、ユーカリやブナの木材パルプから抽出された植物セルロースを主原料とする生分解性グリッターを採用している。土に還るだけでなく、海洋環境下でも数週間で自然分解する新世代の素材だ。さらに驚くべきは、その光学的進化である。「従来のプラスチックラメよりも粒子角が丸く、光の屈折率が天然鉱物に近い」と、国内大手化粧品メーカーの処方開発者は証言する。かつてのチープなギラつきが消え、まるで肌の奥から発光しているかのようなみずみずしさが手に入るようになった秘密は、この素材革命にある。
オフィスカジュアルの脱皮:スーツとネクタイに宿る「ミリ秒の煌めき」
変化はウィメンズ市場にとどまらない。いま、メンズクロージングの売り場で最も熱い視線を集めているのが、遠目には端正なダークネイビーやチャコールグレーに見えながら、歩くたびに微光を放つファブリックだ。
イタリアの名門テキスタイルメーカーが先駆けて発表したウール混紡糸は、ナノレベルの偏光粒子を繊維の芯に巻き込むことで、静止時には光を吸い込み、動いた瞬間にだけシルクのような陰影を走らせる。30代から50代のビジネスパーソンがこぞってこの手のジャケットを手に取る。「プレゼンテーションの場でも決して悪目立ちせず、それでいて相手の無意識に『洗練された印象』を残せる」——大手総合商社に勤める40代の男性はそう語る。威圧感を与えるブランドロゴではなく、素材の奥行きで語る。微光は今、男たちの新しいドレスコードになった。
美容業界を塗り替える「素肌透過型」ハイライトの破壊力
コスメカウンターの様相も一変した。数年前までの「面で光らせる」サイバーなハイライトや、まぶた全体を覆い尽くす大粒グリッターは影を潜め、代わりに棚を独占しているのが「クリアベース」に超微細な偏光パールを分散させたリキッド群だ。
肌の上にのせるとベースの液剤は瞬時に肌と一体化し、目に見えないほど細かい多色の粒子だけが皮膚のキメに沿って整列する。その仕上がりは、化粧をしているというより、水分をたっぷり含んだ肌が自然に光を跳ね返しているかのように映る。特筆すべきは、これまでラメを敬遠してきた40代・50代の大人世代が爆発的に買い支えている点だ。小じわや毛穴に粉が落ちて目立つというかつての弱点は、球状弾性パウダーとのハイブリッド設計によって完全に克服された。光で影を飛ばし、疲労感を消し去る。コンシーラーで塗りつぶす厚化粧へのアンチテーゼとして、光の粒子が機能している。
Z世代からシニアまで——なぜ「光る服」が孤独を癒やすのか
なぜ私たちは、ここまで光に惹かれるのか。トレンドアナリストの間では、長引くデジタル過多と、先行き不透明な世界情勢に対する心理的リアクションだという見方が有力だ。
スマートフォンの冷たいガラス画面を一日中指でスクロールし続ける現代人にとって、物理的な光の揺らめきは、原始的な安心感をもたらす。日光や街灯に反応してきらめく衣服や爪先は、バーチャル空間では決して再現できない「いま、ここに自分が実在している」という確かな手触りを与えるのだ。ファッション心理学の研究者はこれを「感覚の再接続」と呼ぶ。若者たちが古着のデニムに自らグリッターパッチを施す一方で、シニア世代は上質な光沢ニットを身にまとい街に出る。孤独を覆い隠すのではなく、自らの足取りを軽やかにするための「光の処方箋」が求められている。
2026年春夏コレクションが証明した、光と影のハイブリッド美学
今シーズンのランウェイも、この機運を決定づけた。ミラノやパリのコレクション会場では、マットな質感のリネンやドライウールに、部分的なグリッターを組み合わせたレイヤードスタイルが席巻した。
デザイナーたちが共通して提示したのは、「光と影のコントラスト」だ。全身を覆い尽くすミラーボールのようなスタイルは皆無。シックな黒のトレンチコートの裏地から覗くシャンパンゴールドの粒子、あるいはタフなワークパンツのシーム部分にだけ走るシルバーのステッチ。暗闇があるからこそ、一瞬の光が際立つ。デザイナーたちは均一な明るさを嫌い、影を深く肯定した上で光を遊ぶという成熟したバランス感覚を打ち出した。街のファッショニスタたちが真っ先に真似たのも、この「隠された光」のニュアンスだ。
粗悪品とマスターピースを見極める:失敗しない選び方の条件
市場が過熱する中で、玉石混交の状況が生まれているのも事実だ。店頭に並ぶアイテムのすべてが、大人の鑑賞に堪えうるクオリティを持っているわけではない。
失敗を避けるための鉄則は極めて明快だ。まずコスメであれば、「粒子の均一さ」を指の腹で確かめること。指を擦り合わせたときに少しでもジャリつきを感じるものは、光が下品に散乱しやすい。理想は、ベルベットのように滑らかで、光の筋が線ではなく面として流れるものだ。アパレルにおいては、ベースとなる生地の混率に注目したい。安価な合繊に無理やり吹き付けた接着ラメは洗濯数回で剥がれ落ち、みすぼらしい印象を残す。ウールやシルクなどの天然繊維に最初から糸の段階で撚り合わされているものを選べば、何年経っても品格ある陰影を保ち続ける。 (出典: ラメ 入り(Yahoo!ニュース))